沼の怖さを感じた
ラメラをご存知だろうか. 旭山動物園のチリーフラミンゴの解説には「嘴の縁は細かいクシ状になっていて、「ラメラ」と呼ばれます。このラメラを使い餌となるものだけを濾しとって食べ」と書かれている. フラミンゴが濾して食事をすること,そして,そのために嘴の縁がギザギザになっていることにボーっと生きてきた私は 23 年かかっても気づけなかった. 5 歳児のお世話になる前に気づいたきっかけは軽い気持ちで撮ったこの写真だ.
動物園から帰ってこの写真をみたとき初めは何かの間違いだと思った. 嘴がギザギザしているわけがない,そう思っていた. きれいにピントが合っているとは言えないし,素早く開閉している嘴がこのように映るのだということにしようとしていた.
しかし水滴はきちんと止まっていてぶれていない. この写真は嘴の正しい形状を捉えているのだと思わざるを得なかった. 仕方なく「嘴 ギザギザ」などと検索してラメラに行きついた.
ラメラを知った時とてもうれしかった. これまで嘴は平らだと思い込んでいたがそうではないことがわかった. カメラがあればもっとたくさんの発見ができると思った. どんな発見があるのだろうかとわくわくした. 他の動物もたくさん写真を撮ってよく見てみたい,動物以外のものもよく見てみたい. カメラの扱いも上手になりたい. 上手に使える用になればもっとよく見えるようになるだろうから.
コンデジを買って 2 度目の動物園でカメラの強力さを思い知った. これまで見えなかったものが見えるようになった. そういう実感を持った. 当分の間出かける時にはカメラを持ち歩いてたくさん写真を撮り,家に帰ってから時間をかけて見返すことになるだろう. 新しく開かれた世界は魅力的に見える.
でもきっとこの世界もだんだんと新鮮さを失っていくだろう. どんなことにも慣れる日はやってくるし,それ自体は仕方のないことだ. では新しい世界が広がっていく感覚を次に得られるのはどこだろうか. このわくわくする楽しさが今後の人生でもう一度味わえるのだろうか.
カメラを買って楽しかったことを言語化して説明したとき,自分が本当に足を踏み入れた沼の姿を捉えた気がした.